【日銀短観9月】大企業製造業+24、予想届かずも約8年半ぶり高水準|利上げ後初の企業データ

経済指標

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2026年9月調査の日銀短観では、大企業製造業の業況判断DIが+24となり、6四半期連続で改善しました。市場予想(+25)には1ポイント届かなかったものの、2018年3月調査と並ぶ約8年半ぶりの高水準です。収益計画は大幅に上方修正された一方、企業の物価見通しは横ばいから小幅低下にとどまりました。9月の利上げ後としては「景気は強いが、物価の上振れは加速していない」という内容です。


① 大企業製造業+24(予想+25、前回+22)、大企業非製造業+35(予想+36、前回+37)。非製造業は5四半期ぶりの悪化
② 大企業製造業の2026年度経常利益計画は+13.6%で、修正率は+21.7%と大幅な上方修正
③ 物価見通し(全規模・全産業)は1年後2.6%・5年後2.5%と小幅低下。借入金利水準判断は+7ポイントの68へ急上昇

1. この短観の位置づけ

2026年10月1日8時50分、日本銀行が「全国企業短期経済観測調査(短観)<2026年9月調査・第210回>」を公表しました。回答期間は8月26日〜9月30日、全国企業の回答率は99.4%(調査対象9,104社)です。

日銀は9月18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。今回の短観は、展望レポートを公表する10月29〜30日の次回会合に向けて、日銀が最初に手にする企業データという位置づけです。

2. 業況判断DI:製造業は6四半期連続で改善、ただし予想には届かず

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた業況判断DI(%ポイント)は、次のとおりです。

区分6月調査予想9月調査変化幅先行き
大企業・製造業222524+221(予想22)
大企業・非製造業373635▲230(予想30)
中堅企業・製造業17−23+618
中堅企業・非製造業26−24▲219
中小企業・製造業9−14+512
中小企業・非製造業15−15010
全規模・全産業18−21+315

大企業製造業は予想を1ポイント下回りましたが、水準としては2018年3月調査と並ぶ約8年半ぶりの高さです。中堅企業(+6)や中小企業(+5)のほうが大企業より改善幅が大きく、製造業の景況感の改善は規模を問わず広がっています。

大企業非製造業は5四半期ぶりに悪化しました。ただし前回の+37は1991年8月調査以来の高水準だったため、高い水準からの小幅な調整と見るのが妥当です。先行きは、すべての区分で「最近」を下回る見通しとなっています。

3. 業種別:素材が押し上げ、消費関連サービスが悪化

大企業・製造業

業種6月調査9月調査変化幅
石油・石炭製品936+27
鉄鋼▲66+12
非鉄金属3645+9
生産用機械3643+7
化学2026+6
自動車1211▲1
造船・重機等3936▲3
食料品93▲6
(素材業種)1825+7
(加工業種)2325+2

大企業・非製造業

業種6月調査9月調査変化幅
建設5256+4
不動産52520
小売3329▲4
運輸・郵便2521▲4
対事業所サービス4339▲4
宿泊・飲食サービス4638▲8

→ 製造業の改善は素材業種がけん引し、非製造業の悪化は消費関連サービスに集中しています。

4. 収益計画:大企業製造業が大幅に上方修正

2026年度の経常利益計画(前年度比)は次のとおりです。

区分6月調査時点の計画2026年度計画(9月)前回からの修正率
大企業・製造業▲6.7%+13.6%+21.7%
 うち素材業種▲3.3%+4.2%+7.7%
 うち加工業種▲7.8%+16.9%+26.9%
大企業・非製造業▲6.3%▲4.7%+1.8%
全規模・全産業▲6.5%+2.2%+9.4%

大企業製造業の2026年度経常利益計画は前年比+13.6%(修正率+21.7%)です。6月調査では同▲6.7%だったため、減益計画から2桁増益計画へ転じました。上期に限ると+31.1%(修正率+40.9%)に達します。

上方修正の中心は加工業種で、素材業種は+4.2%にとどまります。景況感をけん引したのは素材業種でしたが、利益を押し上げたのは加工業種という「ねじれ」がある点は押さえておきたいところです。大企業非製造業は減益計画のままです。

5. 想定為替レート:154円台へ円安修正、実勢との差は縮小

企業が事業計画の前提としている2026年度のドル円レートは、次のとおりです。

区分6月調査9月調査変化幅
全規模・全産業152.57円154.23円+1.66円(円安方向)
大企業・製造業(輸出企業)151.49円153.79円+2.30円(円安方向)

発表日の朝のドル円は157円台半ばで、想定レートとの差は約3円です。実勢が想定より円安である限り、輸出企業の業績には上振れ余地が残ります。ただ、その余地は6月時点より小さくなっています。第4章の利益上方修正は、この円安前提とセットで読む必要があります。

6. 価格判断と物価見通し:上振れは一服

大企業製造業の販売価格判断DIは40で横ばいでした。仕入価格判断DIは62から59へ低下し、素材業種に限ると62から52へ(▲10)大きく下がっています。仕入れコストの上昇圧力は、やや和らいでいます。

全規模・全産業の物価見通しは、次のとおりです。

項目6月調査9月調査変化幅
物価全般の見通し(1年後)2.7%2.6%▲0.1
物価全般の見通し(3年後)2.6%2.6%0.0
物価全般の見通し(5年後)2.6%2.5%▲0.1
販売価格の見通し(1年後)3.7%3.5%▲0.2
販売価格の見通し(3年後)5.1%5.1%0.0
販売価格の見通し(5年後)6.1%6.1%0.0

※「物価全般の見通し」は企業が見込む消費者物価の前年比(平均)、「販売価格の見通し」は自社の販売価格の現状比です。

6月調査では中小企業・製造業の販売価格見通し(1年後)が+1.1ポイントと突出して上振れしましたが、今回は4.6%から4.2%へ(▲0.4)と、低下幅が最も大きい区分になりました。

→ 2%を上回る水準は保っているものの、一段と上振れる動きは止まりました。

7. 設備投資計画:予想を下回る小幅な下方修正

大企業・全産業の2026年度設備投資計画(含む土地投資額、前年度比)は+11.3%でした。6月の+11.5%から小幅に下方修正され、予想の+12.2%も下回っています。9月調査では上方修正されることが多いだけに、勢いはやや鈍った形です。

それでも2桁の伸びは維持しています。全規模・全産業では+7.6%(修正率+0.8%)でした。

8. 雇用人員判断:人手不足はさらに強まる

「過剰」−「不足」で示す雇用人員判断DIは、次のとおりです。マイナスが大きいほど人手不足が強いことを意味します。

区分(全産業)6月調査9月調査先行き
大企業▲28▲29▲31
中小企業▲39▲42▲45
全規模▲37▲38▲41

特に中小企業で人手不足感が強まっており、先行きもさらに不足感が高まる見通しです。

9. 企業金融:利上げを体感、借入金利判断が急上昇

資金繰り判断(全規模・全産業)は11で横ばい、金融機関の貸出態度判断も13で横ばいでした。企業金融の環境そのものは安定しています。

一方で目立つのが借入金利水準判断(「上昇」−「低下」、全規模・全産業)です。

項目6月調査9月調査変化幅先行き
借入金利水準判断6168+771

9月の利上げを受けて、企業が借入コストの上昇をはっきり意識し始めていることが数字に表れています。

10. まとめ

テーマ今回のメッセージ
景況感製造業は約8年半ぶりの高水準、非製造業は高い水準からの小幅調整
収益大企業製造業が減益計画から2桁増益計画へ転換
想定為替154円台へ円安修正、実勢との差は約3円
物価見通し2%超を維持しつつ、上振れは一服
設備投資2桁増を維持も、予想を下回る小幅な下方修正
雇用人手不足は一段と強まる
企業金融借入金利判断が+7ポイントと急上昇

今回の短観を一言でまとめると、「景気と雇用は利上げを正当化するほど強いが、物価の加速を示す材料は乏しい」という内容でした。10月29〜30日の会合に向けては、今回の短観よりも、今後の賃金・物価データと為替の動きのほうが判断材料として重くなりそうです。

出典

市場予想はみんかぶFX 経済指標を参照しています。

✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年
ファンダメンタルを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。たまにチャート分析もします。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god

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