9月の米CPIは総合が前年比+3.7%で予想を上回り、5月以来の高さとなった。コアも前月比・前年比とも予想を0.1pt上回っている。
①総合は前月比+0.6%(予想通り)、前年比+3.7%(予想3.6%)。ガソリン+9.1%が上昇の半分超を占めた
②コアは前月比+0.3%(予想+0.2%)、前年比+2.6%(予想2.5%)で、6月以来の伸び率に再加速
③前回コアを抑えていたモーター保険と医療サービスがともにプラスに転じ、航空運賃など燃料高の波及も続いている
1. 9月の米CPI:総合・コアとも前年比で上振れ
2026年10月14日に発表された9月の米CPIは、総合が前月比+0.6%(予想+0.6%)で予想通りだった。一方、前年比は+3.7%と予想の+3.6%を上回り、8月の+3.4%から加速した。前年比の水準は5月(+4.2%)以来の高さとなる。
コアCPI(食品・エネルギーを除く指数)は前月比+0.3%で、予想の+0.2%を上回った。前年比は+2.6%(予想+2.5%)で、8月の+2.4%から再加速している。前月比+0.3%は2ヶ月連続となる。
※CPIの仕組みや総合・コアの違いは、CPI(消費者物価指数)の基本解説で詳しく説明しています。
| 指標 | 予想 | 結果 | 前回(8月) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 総合 前月比 | +0.6% | +0.6% | +0.4% | 予想通り |
| 総合 前年比 | +3.6% | +3.7% | +3.4% | 上振れ |
| コア 前月比 | +0.2% | +0.3% | +0.3% | 上振れ |
| コア 前年比 | +2.5% | +2.6% | +2.4% | 上振れ |
次回10月分CPIは2026年11月10日8:30 a.m.(ET)に発表予定(日本時間22:30)。
2. エネルギー:ガソリン+9.1%、総合上昇の半分超
エネルギー指数は前月比+5.2%となり、8月の+2.1%から上昇幅を広げた。ガソリン(全タイプ)は+9.1%で、BLSによると総合の上昇の半分超を占める(季節調整前では+6.5%)。BLSが公表する寄与度(Table 6)では、エネルギー全体で0.377pt、ガソリン単独で0.337ptを押し上げた。燃料油も+15.3%と2ヶ月連続で2桁の上昇となった。一方、電力は+0.2%、都市ガス料金は▲0.3%で、エネルギーサービス全体は+0.1%にとどまっている。
前年比ではエネルギー全体が+20.4%、ガソリンが+34.2%、燃料油が+74.2%と、8月(それぞれ+16.3%・+27.4%・+52.0%)からさらに伸びが拡大した。
| 項目 | 前月比(9月) | 前月比(8月) | 前年比(9月) |
|---|---|---|---|
| エネルギー全体 | +5.2% | +2.1% | +20.4% |
| └ ガソリン(全タイプ) | +9.1% | +3.9% | +34.2% |
| └ 燃料油 | +15.3% | +10.1% | +74.2% |
| └ 電力 | +0.2% | ▲0.2% | +4.4% |
| └ 都市ガス料金 | ▲0.3% | ▲1.1% | +5.0% |
| エネルギーサービス合計 | +0.1% | ▲0.4% | +4.6% |
3. 米CPIのコア:前回の「押し下げ役」が反転、財も上向き
シェルター(住居費)は前月比+0.4%で、8月の+0.3%から加速した。ただし内訳を見ると、帰属家賃(OER)は+0.3%、家賃は+0.2%と落ち着いている。押し上げの中心は宿泊費(ロッジング)の+2.0%で、8月の+2.4%に続き2ヶ月連続の大幅上昇となった。
前回記事(8月分CPI)でコアの鈍化要因として挙げたモーター保険(+0.1%)と医療サービス(+0.3%)は、いずれもプラスに転じた。医療サービスの中では病院サービスが+0.7%と強い一方、処方薬は▲1.2%と大きく下落している。
燃料高の波及とみられる動きも続いている。航空運賃は前月比+1.2%(前年比+22.4%)、輸送サービス全体は+0.6%だった。
財の側では、コア財(食品・エネルギーを除く商品)が+0.3%(8月+0.1%)と上向いた。中古車+0.7%、アパレル+0.3%に加え、玩具が+4.2%と統計開始以来最大の上昇を記録した。レクリエーション+0.5%、大学授業料+1.2%も押し上げに寄与している。下落した項目は、通信(▲0.2%、8月+2.3%からの反落)、インターネットサービス(▲1.3%)、処方薬などに限られた。
| 項目 | 前月比(9月) | 前月比(8月) | 前年比(9月) |
|---|---|---|---|
| シェルター全体 | +0.4% | +0.3% | +3.2% |
| └ 帰属家賃(OER) | +0.3% | +0.2% | +3.3% |
| └ 宿泊費 | +2.0% | +2.4% | +4.4% |
| 航空運賃 | +1.2% | +2.7% | +22.4% |
| 中古車 | +0.7% | +0.4% | ▲1.5% |
| 医療サービス | +0.3% | ▲0.2% | +2.5% |
| モーター保険 | +0.1% | ▲0.8% | ▲5.0% |
| 通信 | ▲0.2% | +2.3% | +1.1% |
| 玩具 | +4.2% | ▲2.3% | +6.6% |
4. 食品:全体は横ばい、内食は小幅下落
食品指数は前月比0.0%(横ばい)だった。内食(食料品)は▲0.1%で、牛肉▲1.0%、牛乳▲2.0%などが押し下げた。一方、炭酸飲料は+1.5%、果物・野菜は+0.5%と上昇している。外食は+0.2%(フルサービス+0.3%、リミテッドサービス+0.2%)。
前年比では、食品全体+2.5%、内食+1.8%、外食+3.5%。卵は前年比▲20.6%と大幅な下落が続いている。
5. 8月の米CPIとの比較
| 観点 | 8月CPI | 9月CPI(今回) |
|---|---|---|
| 総合前月比 | +0.4% | +0.6% |
| 総合前年比 | +3.4% | +3.7% |
| コア前月比 | +0.3% | +0.3%(横ばい) |
| コア前年比 | +2.4% | +2.6% |
| ガソリン前月比 | +3.9% | +9.1% |
| シェルター前月比 | +0.3% | +0.4% |
| モーター保険前月比 | ▲0.8% | +0.1% |
| 医療サービス前月比 | ▲0.2% | +0.3% |
8月は「総合は予想通り、コア前年比は鈍化継続」という構図だった。9月はガソリン高が一段と強まり、コア前年比も再加速に転じた。前回指摘した「前年比ベースではディスインフレの流れが続いている」という見方は、今回いったん崩れた形になる。
6. 市場全体への含意
発表直後の初動(日本時間21:30〜22:00)
CPI発表直後の市場は、コアの上振れを素直に利上げ観測の強まりとして織り込んだ。
- 米10年債利回り:発表前の5.19%前後から一気に上昇し、30分ほどで5.32〜5.33%付近に達した(日中高値5.335%)。上昇幅はおよそ+14bpと、発表直後としては大きな反応だった
- ドル円:158円60銭前後から158円85銭付近へ、発表と同時に跳ね上がった。米金利の上昇に連動したドル買いだ
- WTI原油先物:95ドル台で推移し、CPIへの目立った反応は見られなかった
なお、米国株の現物市場は日本時間22:30に取引が始まるため、CPIの初動には含まれない。
その後の推移
10年債利回り・ドル円とも、初動の上昇分を時間をかけて削った。日本時間3時のベージュブック公表を挟んでさらに下落し、10年債利回りは安値5.174%、ドル円は一時158.047円をつけた。4時30分前後の時点では、10年債利回りが5.197%(前日比▲2.0bp)、ドル円が158.291円(同▲0.022円)。株式はS&P500が▲1.14%、NASDAQ100が▲1.97%、NYダウが▲0.22%で推移している。ただし発表後の動きにはベージュブックなどCPI以外の材料も重なっており、CPI単体の反応として読むことはできない。
Fedの政策金利見通し
Fedは9月FOMCで利上げを決定しており、現在の政策金利の誘導目標は3.75〜4.00%。CMEのFedWatchツールによると、日本時間10/15 4:10時点(10/14 14:10:54 CT、ベージュブック公表後)の10月FOMC(10/27〜28)での利上げ確率は32.7%で、前日(10/13)の22.1%から上昇した。CPIを含む10/14の材料全体で、利上げ観測が強まった形だ。12月会合(12/9)の時点まで見ると、政策金利が4.00〜4.25%以上となる確率は100%で、年内に少なくとも1回の追加利上げが織り込まれている。
| 10月FOMC 目標レンジ | 10/14 14:10:54 CT(日本時間10/15 4:10) | 1日前(10/13) | 1週間前(10/7) |
|---|---|---|---|
| 3.75〜4.00%(据え置き) | 67.3% | 77.9% | 82.3% |
| 4.00〜4.25%(+0.25%) | 32.7% | 22.1% | 17.7% |
7. 読み解き——9月の米CPIをどう見るか
今回のCPIで、総合の加速がガソリン主導であることははっきりしている。BLSが公表する寄与度では、ガソリン単独で総合の前月比+0.6%のうち0.337ptを押し上げた。
注目したいのはコアの中身だ。前回、コア前年比の鈍化を支えていたモーター保険と医療サービスが、そろってプラスに転じた。そこに航空運賃や輸送サービスの上昇、コア財の加速が重なっている。エネルギー高が他の品目へ広がる「二次的波及」を疑わせる材料が増えてきた。
一方で、OER(+0.3%)と家賃(+0.2%)は落ち着いており、住居費の加速は振れの大きい宿泊費によるところが大きい。また、BLSがTable 6で公表するコア前月比の標準誤差は0.05%で、予想との差0.1ptは統計誤差の範囲(±0.1)にぎりぎり収まる。単月の上振れを「基調の転換」と断定するには早い。
CPI発表直後の初動では、米長期金利が+14bp前後上昇し、市場は利上げ観測の強まりを素直に織り込んだ。その後の戻りはベージュブック公表を挟んでおり、CPI単体の評価がどこまで修正されたかは切り分けられない。
8月分記事では、8月の上振れが一時的か基調の変化かを9月分で見極めるとしていた。9月分の答えは「エネルギー高はさらに強まり、コアにも波及の兆しが見え始めた」となる。10月分(11月10日発表)では、ガソリン価格の動向と、航空運賃・輸送サービスへの波及が続くかどうかが改めて試されることになる。
📚 主な出典
- U.S. Bureau of Labor Statistics「Consumer Price Index — September 2026」(2026年10月14日公表、USDL-26-1574)|BLS公式PDF(一次資料)
- CMEのFedWatchツール(10/14 14:10:54 CT時点)
予想値はみんかぶFX 経済指標カレンダーを参照しました。
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年
ファンダメンタルを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。たまにチャート分析もします。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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