- 信用取引はレバレッジをかける取引であり、預けた資金(委託保証金)以上の損失を被る可能性があります
- 相場が想定と逆に動いた場合、追加の保証金(追証)が必要になることがあります(詳細は本シリーズ3本目で解説)
- 信用取引には金利・貸株料などの現物取引にはないコストが発生します
- 本記事は信用取引の基本的な仕組みを解説する情報提供が目的であり、特定の取引を推奨・勧誘するものではありません
- 現物取引は自己資金の範囲内でしか取引できないが、信用取引は委託保証金率30%のルールにより理論上約3.3倍まで取引できる
- 信用取引は「買い」だけでなく「売り(空売り)」からも入れるため、株価が下がる局面でも利益を狙える
- 借りて取引する以上、金利・貸株料などのコストと、追証・ロスカットといった現物取引にはないリスクが伴う
株式投資を現物取引から始めた人が「信用取引」という言葉に触れると、何を借りて、何が現物と違うのか、最初はイメージしづらいことが多い。信用取引は正しく仕組みを理解すれば強力な選択肢になる一方、レバレッジがかかる分だけリスクも現物取引とは別次元になる。本記事ではまず「信用取引とは何か」という土台の部分を、現物取引との違いとレバレッジの仕組みを軸に整理する。
現物取引と信用取引の違い
自分の持っている資金の範囲内で株式を売買する、最も基本的な取引形態。株を買うには買付代金の全額が必要で、保有している株を売ることでしか「売り」の取引はできない。
証券会社に委託保証金という担保を預け、資金(信用買いの場合)または株式(信用売り・空売りの場合)を借りて行う取引。担保に対して一定倍率までの金額を取引できるほか、株式を借りて先に売ることもできる。
| 項目 | 現物取引 | 信用取引 |
|---|---|---|
| 取引の元手 | 自己資金のみ | 委託保証金を担保に資金・株式を借りる |
| 取引できる金額 | 保有資金の範囲内 | 委託保証金率30%(法令上の下限)の場合、理論上約3.3倍まで |
| 取引の方向 | 「買い」から入るのみ | 「買い」「売り(空売り)」の両方から入れる |
| 保有期間 | 制限なし | 制度信用は原則6か月などの期限あり(2本目で解説) |
| コスト | 売買手数料のみ | 売買手数料に加え、金利・貸株料等が発生 |
| 特有のリスク | 投資額を超える損失は基本的にない | 追証・ロスカットにより投資額を超える損失が生じうる |
レバレッジの仕組み
信用取引を始めるには、証券会社に委託保証金を差し入れる必要がある。日本の法令上、委託保証金率は約定代金の30%以上と定められており、多くのネット証券もこの30%を採用している(証券会社により33%など、法令の下限より高く設定している場合もある)。あわせて、金額面でも最低30万円以上の委託保証金が必要というルールがある。
委託保証金率が30%ということは、裏を返せば「保証金の約1÷0.30 ≒ 3.33倍」までの金額の取引が可能になる、ということだ。
委託保証金として100万円を差し入れた場合
→ 100万円 ÷ 30% = 約333万円分まで取引できる計算になる(現金で保証金を差し入れた場合)
※ 保有している株式を担保(代用有価証券)として差し入れる場合は、時価の約8割程度で評価されるのが一般的。同じ時価100万円分の株式を担保にしても、現金100万円のケースより実効的なレバレッジは下がる点に注意したい。
これらはあくまで制度上の上限の目安。実際には証券会社ごとの規制や、余裕を持った資金管理の観点から、上限いっぱいまで使うことは推奨されない。
約3.3倍の取引ができるということは、株価が思惑通りに動いたときの利益も約3.3倍になる一方、逆に動いたときの損失も同様に拡大するということだ。現物取引であれば投資額以上の損失は基本的に発生しないが、信用取引では相場の変動によって委託保証金の評価額が目減りし、追証(おいしょう)と呼ばれる追加保証金の差し入れが必要になる場面がある。追証・ロスカットの具体的な仕組みは、本シリーズ3本目で詳しく解説する。
信用取引を使うメリット
少ない元手で大きな金額の取引ができるため、同じ自己資金でもより大きなポジションを持てる。資金効率を重視する投資家にとっては、信用取引を活用する大きな動機になる。
現物取引は株価が上がらなければ利益が出ないが、信用取引では株を借りて先に売り、後で買い戻す「空売り」ができる。これにより株価が下落する局面でも利益を狙える。空売りの具体的な手順とリスクは、本シリーズ4本目で扱う。
すでに現物で保有している株式について、短期的な下落が予想される局面で信用売りを組み合わせる「つなぎ売り」という活用法もある。保有を続けながら一時的な値下がりリスクを抑える目的で使われる。
信用取引を始める前に
- ① 信用取引とは何か(現物取引との違い、レバレッジの仕組み) ← 本記事
- ② 制度信用/一般信用の違い
- ③ 追証・ロスカットなどのリスク
- ④ 空売り(売りから入る)の解説
信用取引とは、証券会社に委託保証金という担保を預けることで、資金や株式を借りて売買を行う取引です。現物取引との違いは、委託保証金率30%のルールにより理論上約3.3倍まで取引を拡大できる点と、株を保有していなくても”売り”から取引を始められる点の2つに集約されます。
資金効率を高められ、下落局面でも利益を狙えるという魅力がある一方、レバレッジは利益だけでなく損失も同じ倍率で拡大させます。次回は、信用取引の中でも特に重要な区分である「制度信用」と「一般信用」の違いを解説します。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。市場価格は常に変動しており、正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。執筆者は金融商品取引業者ではなく、投資助言業の登録も受けていません。投資判断はご自身の判断と責任において行ってください。信用取引はレバレッジにより元本を超える損失が生じる可能性があります。



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