日本の暗号資産規制はどこまで進んだか|金商法改正・分離課税・ETFの現状【2026年9月】

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日本では2026年7/15、暗号資産のルールを定める法律(金商法)が改正されました。米国では同じような法案(クラリティ法案)が上院で否決されているので、日本は一歩先を行っています。この記事では、「何が変わったのか」「いつから変わるのか」「まだ決まっていないことは何か」を、できるだけやさしい言葉で整理します。米国の状況は、別記事にまとめています。
⏱ 30秒で読む結論
日本では2026年7/15、暗号資産を「金融商品」として扱う法律の改正が決まり、7/23に正式な形で公布されました。これまで暗号資産は「決済の手段」という扱いでしたが、これからは株や投資信託と同じ「金融商品」というグループに入ります。あわせて、暗号資産にも初めて、インサイダー取引の禁止や、お金をもらって暗号資産を紹介するときの表示義務が導入されます。実際にルールが動き出すのは、公布から1年以内(2027年中が有力)です。税金が安くなる「分離課税」は、その1年後、2028年1月からが有力な見通しです。暗号資産の上場投資信託(ETF)は、早ければ2027年、遅ければ2028年という見方が出ています。
  1. 7/15に法律が成立、7/23に公布。実際に動き出すのは2027年中の見込み
  2. お金をもらって暗号資産を紹介するときは表示が必要に。インサイダー取引には刑罰も。ブログやSNSで発信する人にも関係あり
  3. 税金が安くなるのは2028年1月が有力、ETFは2027〜2028年の見通し。どちらもまだ確定ではない

①何が変わったか

一言でいうと、暗号資産が「支払いの手段」から「投資の対象(金融商品)」として、正式に扱われるようになりました。

  • 7/15(水)、参議院でこの改正法が可決・成立しました。4/10に閣議決定され国会に出され、6/11に衆議院を通過し、7/15に参議院で成立、という流れです。7/23に、法律として正式に公布されました。
  • これまで暗号資産は「資金決済法」という、送金や決済を扱う法律の中で規制されていました。今後は「金商法(金融商品取引法)」、つまり株や投資信託と同じ法律の中に移ります。暗号資産を扱う取引所は、これまで「暗号資産交換業者」と呼ばれていましたが、今後は「暗号資産取引業者」という名前に変わります。
  • この改正は、暗号資産だけでなく、企業の環境・社会への取り組みの開示や、スタートアップ企業への資金供給なども含む、まとめての法改正です。この記事では、暗号資産に関する部分だけを扱います。
  • 「暗号資産とは何か」という定義自体は、今までとほぼ同じです。対象になる範囲が急に広がったり狭まったりすることは、基本的にありません。
特定暗号資産とは
この法律では、暗号資産を2種類に分けます。特定の会社などが発行している暗号資産(新しいトークンを企業が発行するようなケース)を「特定暗号資産」と呼び、その発行者には情報を公開する義務が課されます。一方、ビットコインやイーサリアムのように、特定の発行者がいない暗号資産は「非特定暗号資産」と呼ばれ、この公開義務の対象にはなりません。ただし、税金の話ではこの言葉の意味が変わります。下の注意ボックスを参照してください。
⚠️ 注意:「特定暗号資産」という言葉は、実は2つの制度で意味が違います。

・金商法(情報公開のルール)での「特定暗号資産」:発行者がいる暗号資産(IEO形式のトークンなど)を指します。ビットコインやイーサリアムは、発行者がいないため、ここには含まれません。
・税制(分離課税)での「特定暗号資産」:国内の登録業者(暗号資産取引業者)が取り扱っている暗号資産を指します。発行者の有無とは関係ありません。ビットコインやイーサリアムも、国内登録業者が扱っていれば、こちらには含まれます。

同じ名前がついていますが、範囲が異なる制度なので、混同しないよう注意が必要です。次の②で説明する分離課税は、税制のほうの「特定暗号資産」が対象です。

②税金が安くなる「分離課税」とは

一言でいうと、暗号資産で得た利益にかかる税金が、将来的に今よりぐっと安くなります。

  • 今の税率は、他の所得と合算して計算される「総合課税」で、最大55%(住民税を含む)にもなります。今後は、株やFXと同じように、利益だけを切り離して計算する「分離課税」になり、税率は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)に下がります。
  • 対象になるのは、金商法の登録を受けた暗号資産取引業者が取り扱っている暗号資産(税制上の「特定暗号資産」。上の注意ボックスのとおり、金商法の「特定暗号資産」とは範囲が違います)の現物取引・デリバティブ取引・ETFです。ビットコインやイーサリアムのように、国内の登録業者が扱っている主要な暗号資産は、こちらに含まれる設計です。海外の無登録業者やDEX、個人間の取引、マイニング・ステーキングで得た分は、引き続き総合課税のままです。
  • 損失が出た場合、3年間は将来の利益と相殺できます(繰越控除)。ただし、株など他の金融商品の損益とは相殺できない見込みです。
  • いつから分離課税が始まるかは、①の法律が実際に動き出す日(施行日)の、翌年の1月1日と決まっています。施行が2027年中になれば、2028年1月1日からが有力、というのが税理士による試算です。ただし、この日を最終的に決める政令は、まだ作られていません。
  • 2026年・2027年の取引は、今までどおり総合課税のままです。また、分離課税が始まる前に出した損失は、新しい制度には持ち越せない見込みです。
  • 暗号資産の取引所には、取引の内容を税務署に報告する義務も、新たに課される方向です。ただし、この報告義務が始まる時期は、分離課税の開始よりも遅れる可能性があります。

③暗号資産ETF(上場投資信託)はいつから買える?

一言でいうと、日本の証券取引所で、株を買うのと同じ感覚でビットコインなどに投資できるようになる日が、視野に入ってきました。

  • 2026年9月の時点では、日本ではまだ暗号資産ETFは1つも上場していません。
  • 「米国から4年遅れ」の根拠:米国では2024年1月10日に、ビットコインそのものを裏付けとするETF11本が一斉に承認され、翌1月11日から取引が始まりました。もし日本で2028年にETFが上場すれば、2024年からちょうど4年後になります。一方、後述するJPX(日本取引所グループ)の社長が言う「早ければ2027年」が実現すれば、3年遅れで済みます。つまり「4年遅れ」は、一番遅い2028年上場を前提にした数字で、2027年に実現すれば3年遅れです。
  • 日本取引所グループ(JPX)の山道裕己社長は4/30、法律と税金の扱いさえ決まれば「いつでもできる」と述べ、早ければ2027年の上場に含みを持たせました。ただし同時に、法整備が遅れれば2028年にずれ込む可能性も認めています。
  • 金融庁の資料には、暗号資産ETFを「政令の改正で組成できるようにする」という方針が書かれています。ただし、ETFの解禁が、税制改正(2028年1月が有力)より先に来るかどうかは、政治関係者の間でも見方が分かれています。
  • 野村ホールディングスやSBIホールディングス傘下の運用会社が、商品の準備を進めていると報じられています。
  • NISA(少額投資非課税制度)の対象になるかどうかは、確認できた範囲ではまだ決まっていません。
⚠️ ここに書いた時期は、どれも「今のところの見込み」です。細かいルールを決める政令や内閣府令がまだ作られていない部分が多く残っています。実際の施行日、税金が安くなる日、ETFが上場する日は、決まり次第、改めてお伝えします。

④覚えておきたい変更点(発信者や海外業者利用者にも関係あり)

ここからは、投資家だけでなく、暗号資産についてブログやSNSで発信している人、海外の取引所を使っている人にも関わる話です。

①お金をもらって紹介するときは、その旨を書く義務が生まれます

一言でいうと、企業からお金をもらって暗号資産を紹介するなら、「これは宣伝です」とわかるように書く必要があります。

  • 暗号資産の発行者や取引所からお金をもらって、その暗号資産について「おすすめです」のような意見をネット上で書く場合、お金をもらっていることを表示しなければならなくなります。株のPR記事に、すでにある仕組みと同じです。
  • これにあたる例:取引所からの紹介料やアフィリエイト報酬をもらって「この銘柄がおすすめ」と書く記事や投稿、企業案件として特定の銘柄を紹介する記事です。
  • これにあたらない例:お金をもらわずに、自分の意見として書く記事です。ただし、アフィリエイトのリンクを貼っている場合は、お金をもらっているとみなされる可能性があるため、「PR」「広告」などの表示を付けておくのが安全です。
  • 具体的にどんな言葉で、どこに表示すればよいかは、これから決まるルール(内閣府令やガイドライン)次第で、今のところまだ公表されていません。

②暗号資産にも「インサイダー取引」の禁止が導入されます

一言でいうと、内部の人だけが知っている情報をもとに、公表前に売買することが、初めて法律で禁止されます。

  • 対象になるのは、日本国内の取引所が扱っている(または扱うことを決めた)暗号資産です。海外の無登録の業者や、DEX(分散型の取引所)だけで扱われている暗号資産は、基本的に対象外です。
  • 禁止の対象になる人の例:暗号資産を発行している会社の役員、暗号資産の取引所の役員、発行されている暗号資産の20%以上をまとめて売買する人(大量売買者)、そして、これらの人から情報を直接聞いた人です。一般の個人投資家が、誰でも見られる公開情報だけをもとに売買する分には、まったく問題ありません。
  • 「内部情報」の例:発行者が技術の仕様を変える決定をしたとき、取引所がその暗号資産の取り扱いを始める・やめると決めたとき、大量売買者が大きな売買をすると決めたとき、などです。
  • 罰則は、上場している株のインサイダー取引と同じで、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金です。情報を人に教えることや、それをもとに「今のうちに買っておいた方がいい」のように勧めることも禁止されます。

③登録していない業者への罰則が、大きく重くなります

一言でいうと、無登録で営業している業者への罰は、今までよりずっと重くなります。

  • 登録を受けずに営業した場合の罰則は、今の「3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金」から、「10年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金」へと、大きく引き上げられます。
  • 無登録の業者が扱っている、正式な取引所では扱われていない暗号資産(未公表暗号資産)を買ってしまった場合、その売買そのものを無効にできる仕組みも新しくできます。

④海外の取引所を使っている人へ:大丈夫な場合とダメな場合

今回の改正は、海外の取引所を使っている人にも関わります。分かれ目は「その業者が日本で正式な登録を受けているかどうか」です。

✅ 大丈夫な場合(日本で登録している海外系の業者)
海外発祥の取引所でも、日本法人を作って金融庁に登録すれば、日本の業者と同じ扱いで正式に営業できます。たとえば、Binance Japan(2023年8月にサービス開始。これに伴い、登録していない本体のBinanceによる日本向けサービスは終了しました)、BitTrade(旧Huobi Japan)、OKCoinJapanなどは、正式に登録を受けて営業している業者です。これらは、今回の改正後も、日本の他の取引所と同じルールに従います。日本の登録業者を使っているなら、その点は心配いりません。
❌ ダメな場合(登録せずに日本の利用者を勧誘している業者)
日本で登録を受けずに、インターネットなどを通じて日本に住む人を相手に営業する行為は、実は今の法律でもすでに禁止されています。金融庁はこれまで、Binance(2018年・2021年)、Bybit、Bitget、MEXC、KuCoinなど、いくつもの海外の取引所に対して「無登録で営業している」という警告を出してきました。2025年2月には、警告を受けた業者のアプリが、App StoreやGoogle Playから削除される出来事もありました。Bybitは2026年7/22正午、日本居住者の未決済ポジションが一斉に強制決済され、日本向けサービスを終えました。Bitgetも2026年8月に新規登録を停止し、同年内にサービスを終える予定です。

今回の改正で、無登録業者への対応がどう変わるか

  • 無登録営業への罰則が、大きく引き上げられます。これは海外の業者であっても同じで、日本に住む人を勧誘すれば対象になります。
  • 無登録業者が扱う暗号資産の売買を、原則として無効にできる仕組みができます。無登録だと知らずに取引してしまった人を守るための規定です。
  • 裁判所がすぐに営業をやめさせる命令(緊急差止命令)を出せる対象にもなり、監視する当局(証券取引等監視委員会)が裁判所にそれを申し立てる権限も整備されます。

つまり:「海外の取引所=危ない」というわけではありません。日本できちんと登録しているかどうかが、安全かどうかの分かれ目です。海外の取引所を使う場合は、金融庁が公表している登録業者の一覧で、その業者が載っているか確認しておくと安心です。

⑤発行者や取引所には、情報を公開する義務が増えます

一言でいうと、暗号資産を発行する会社や、それを扱う取引所は、これまで以上に情報を公開しなければならなくなります。

  • 「特定暗号資産」(発行者がいる暗号資産)を発行する会社は、発行するときと、1年に1回の定期報告(決算から3か月以内が目安)で、情報を公開する義務を負います。もし公開した情報にウソがあった場合、その発行者は、損害を受けた投資家に賠償する責任を負います(自分に落ち度がなかったと言っても免れません)。
  • 会計士による監査証明を受ける義務もありますが、個人投資家1人あたりの投資額が原則50万円までの小さな募集であれば、この監査の義務は免除される見込みです。

⑥取引所には、証券会社並みのルールが適用されます

一言でいうと、暗号資産の取引所は、これからは証券会社に近いレベルのルールを守らなければなりません。

  • 具体的には、大株主に関する規制、財務の健全性を示す比率の規制、営業担当者の資格制度など、今まで暗号資産の取引所には課されていなかった規制が、新たに加わります。
  • 暗号資産の貸し借りを仲介する行為や、暗号資産を対象にした運用・助言を行う行為も、新たに登録が必要な業務になります。
  • 顧客の暗号資産を安全に管理するためのシステムを、取引所に提供している会社にも、新しく届け出の制度ができます。過去に、こうしたシステムの提供会社がサイバー攻撃を受け、それが不正流出の一因になった事例を踏まえた対応です。

⑤いつから変わるのか(スケジュールまとめ)

項目時期
法律の成立・公布2026年7/15に成立、7/23に公布
実際にルールが動き出す日(施行)公布から1年以内。2027年中が有力
業者が名前などを届け出る期限施行から2週間以内
登録なしでも営業を続けられる猶予期間施行から6か月間。その間に登録の申請をすれば、最大2年間は営業を続けられる

※このスケジュールは、法律の附則と専門家(法律事務所)の整理に基づくものです。政令はまだ公布されていません。

今、暗号資産の取引所を営んでいる会社は、施行前のうちに、自社がどの区分に当てはまるか(登録が必要か、届け出だけで足りるか)を確認し、準備を進める必要があると、専門家は指摘しています。お金をもらっての紹介の表示義務や、インサイダー取引の禁止も、この施行日から実際に適用される見込みです。税金とETFの時期については、②③で説明したとおりです。

⑥米国と比べると

米国でも、同じような枠組みを作る「クラリティ法案」が話し合われていましたが、9/15の採決で否決されました(詳しくは別記事で)。日本はすでに法律の成立まで進んでいますが、米国は「暗号資産をどの機関が監督するか」という根本のところで、話し合いが難航しています。ただし、日本も、インサイダー規制や税金の細かいルールはこれから決まる部分が多く、「法律ができた=すぐに全部変わる」わけではない点は、日米で共通しています。→ 詳しくは:クラリティ法案が米上院で否決

こうして並べてみると、今回の改正は個別バラバラの規制ではなく、「投資家を守る」という一本の筋で貫かれています。暗号資産を金融商品として扱うことも、お金をもらっての紹介に表示を求めることも、内部情報での売買を禁じることも、無登録業者への締め付けを強めることも、すべて根っこは同じです。投資家が、正しい情報をもとに、公正な条件で、安全な相手と取引できるようにする。この改正が目指しているのは、突き詰めればその一点だと言えそうです。
📌 まとめ

日本では7/15に、暗号資産を「金融商品」として扱う法律の改正が成立しました。柱は、インサイダー取引の禁止、お金をもらっての紹介への表示義務、無登録業者(海外の業者を含む)への罰則強化、情報公開の義務づけです。実際に動き出すのは2027年中が見込みで、税金が安くなる分離課税は2028年1月が有力です。暗号資産ETFは早ければ2027年、遅ければ2028年という見方が出ていますが、細かいルールを決める政令や内閣府令がまだ整っておらず、確定した日程はまだありません。
📚 主な出典
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年
ファンダメンタルを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。たまにチャート分析もします。ナンピンは得意です。
X(旧Twitter):@pablo29god
⚠️ 免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品(暗号資産を含む)の売買や、特定の取引所の利用を推奨・勧誘するものではありません。本記事は税務・法律に関する助言ではなく、個別の税務・法律相談は税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。法令の施行時期や内容、政令・内閣府令の内容は今後変更される可能性があります。市場価格は常に変動しており、掲載情報の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。執筆者は金融商品取引業者ではなく、投資助言業の登録を受けていません。投資判断はご自身の責任で行ってください。暗号資産・FX・先物・CFD取引は、価格変動やレバレッジにより元本を超える損失が生じる可能性があります。

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