クラリティ法案が米上院で否決|争点と今後の道筋【2026年9月】

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9/15(火・米国時間)、米上院で暗号資産の包括法案「クラリティ法案」の審議入りを問う手続き採決が行われ、否決されました。この記事では、法案が何を決めるものだったのか、何が起きたのか、なぜ否決されたのか、これからどうなるのかを、事実ベースで整理します。ビットコイン価格への影響は、連載のその後の記事でも触れているため、ここでは規制の側から見ます。日付と時刻は、米国の現地時間(東部時間)です。
⏱ 30秒で読む結論
9/15(米国時間)、米上院はクラリティ法案の審議入りを問う手続き採決で、賛成49・反対50となり、必要な60票に届かず否決しました。争点は、大統領ら公職者の暗号資産事業をめぐる倫理条項と、ステーブルコインの利息の扱いでした。再採決の動議は出ており廃案ではありませんが、11/3の中間選挙前は厳しく、当面はSECとCFTCが既存の権限でルール整備を進める形です。
  1. 賛成49・反対50(必要60票)。民主党の投票者全員、無所属2人、共和党4人が反対
  2. 争点は倫理条項とステーブルコイン利息。法執行やDeFiの調整も残っていた
  3. 再採決の動議は出たが日程は未定。SECは9/17に暫定免除で先行

①クラリティ法案とは何か

クラリティ法案は、暗号資産の「市場構造」を法律で定める法案です。下院は2025年7月17日に294対134で可決しており、上院ではこれと異なる600ページ超の修正版が審議されていました。

項目主な内容
監督権限暗号資産を、SEC(証券)とCFTC(商品先物)のどちらが監督するかを線引き。ブロックチェーン自体の利用から価値が生じる「デジタル商品」は主にCFTC、資金調達や投資契約はSEC。CFTCがより大きな役割を持つ点が論争に
取引所など現物デジタル商品の取引所・ブローカー・ディーラーはCFTCに登録し、顧客資産の分別管理や開示、マネロン対策などを求められる
ステーブルコイン保有しているだけで利息を払うことは禁止。取引・決済・ポイントなどに連動した報酬は一部認める案(2025年7月成立のGENIUS法を補完)
DeFi開発者や支配者の扱いに関する規定を含む。上院版は現物デジタル商品の取引に範囲を限定
倫理条項公職者の暗号資産事業を制限する条項(7月の更新版で初めて盛り込み、最終版で修正)

現状は、暗号資産の規制姿勢が政権によって変わります。バイデン政権下のSECは積極的な取り締まりを行い、トランプ政権下では業界寄りに転じました。法律にすれば、その変動を抑えられるというのが、法案の意義とされていました。

②何が起きたか

  • 9/15(火)午後2時18分ごろ(米東部時間)に、上院は「デジタル資産市場明確化法(Digital Asset Market Clarity Act、H.R.3633)」の審議に入る動議への討論終結を問う採決を始め、午後3時ごろ、賛成49・反対50で不成立となりました(上院記録の投票番号234)。
  • 賛成は共和党議員のみ。反対は、投票した民主党議員全員、無所属のKing議員(メイン)・Sanders議員(バーモント)、共和党のCollins(メイン)、Hawley(ミズーリ)、Moran(カンザス)、Tillis(ノースカロライナ)の4人です。民主党のCoons議員は投票していません。
  • 上院の記録によると、Tillis議員は再考の動議を出すために反対票を投じました。報道によると、当初は賛成票でしたが、最後に反対へ変えています。動議は提出されましたが、再採決の日程は決まっていません。
  • 採決の直前(9/13〜14)に、共和党のLummis議員らは倫理規定を書き換えた最終版を公表しました。民主党の対案は採決の数時間前に共和党が退けたと報じられています。
手続き採決(討論終結の採決)とは
上院では、法案の審議に入る動議への討論を打ち切るために60票(5分の3)が必要です。今回の採決は法案そのものの可否ではなく、審議に入れるかどうかの関門でした。

③なぜ否決されたのか

①倫理条項(民主党の主な反対理由)

公職者が在任中に暗号資産で利益を得ることを防ぐ条項です。

  • 7月版(7/22公表):大統領・議員・上級職員とその配偶者が、在任中に暗号資産を発行・後援することを禁じる内容でした。民主党は次の3点に反発しました。
    • 禁止は新規発行が対象で、既存の保有や収入には及ばない
    • 執行は司法省のみで、州司法長官の提訴は禁止
    • 規定は2029年1/20正午(トランプ氏の任期末)に失効し、その後は在任中の違反も訴追できない。民主党は、これを事実上の事後免責だと批判しました
  • 最終版(9/13〜14公表):2029年の失効規定が削除されました。州司法長官にも提訴権が与えられ、罰則も引き上げられました(利益の10%か50万ドルの小さい方から、20%か50万ドルの大きい方へ、The Defiant報道)。共和党のLummis議員らは、トランプ氏が同意した内容だと説明しています。
  • それでも残った論点:民主党は誰も最終版に賛成しませんでした。
    • 配偶者は対象だが、成人した子は対象外との指摘
    • 禁止の対象が新規発行・後援で、既存の事業収入には及ばない
    • 文言が緩く、回避できるという批判(NPR報道)
  • 民主党の交渉役Gallego議員は、採決前、以前の倫理の妥協案なら多くの民主票が得られたと述べていました。
倫理条項をめぐる議論の背景には、トランプ大統領の家族の事業に対する民主党側の不信感がありました。報じられている事実は次のとおりです。
  • トランプ氏は2025年に暗号資産事業で開示ベースで約12〜14億ドルの収入を得たと報じられています(NPRは約14億ドル、Decryptなど一部報道は12億ドル超)。
  • 長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏は、予測市場Kalshiの有償アドバイザーです。投資会社はPolymarketに出資し、同社の諮問委員も務めています(Fortune 8/9)。ジュニア氏側は、自身は予測市場で賭けておらず、関連企業のために政府関係者と接触していないと説明しています(CNN 5/15)。
  • 未確認の噂(2025年10月):10/10前後、トランプ氏が対中100%関税を示唆する前に、Hyperliquid上の一つのウォレットが巨額のショートを建て、約1.5〜2億ドルの利益を得たと報じられました。ブロックチェーン分析会社が「トランプ・インサイダー」とタグ付けしましたが、内部情報を得ていた直接の証拠はなく、関連する人物はトランプ家との関係を否定しています。
  • 原油先物(2026年3/23):月曜の午前6時49分ごろ(米東部時間)、トランプ氏がイランとの協議をTruth Socialに投稿する約15分前に、原油先物が急に売買され、7時4分ごろの投稿後に原油が急落しました(FT・CBS報道)。取引主体は特定されておらず、規制当局が調べていると報じられています。
  • 家族が投稿前に逆のポジションを取ったとする報道は、確認できた範囲ではありません。家族の関与を示す公開証拠はないとされています。

※このボックスは、原油先物や暗号資産の取引をめぐる論点で、法案の倫理条項が直接扱う暗号資産の発行とは別の話です。

②ステーブルコイン利息(銀行界の反対)

  • 銀行界、特に地域銀行は、暗号資産企業がステーブルコインの利息に近い報酬を出せることに反対しました。預金が流出すれば、地域の中小企業や農家への融資が細るという主張です。
  • 暗号資産側は、クレジットカードのポイント還元と同じ性質だと反論しています。
  • 米銀行協会は、GENIUS法の利息禁止を取引所が回避する抜け穴を、この法案で塞ぐよう求めていました。

③その他

  • 法執行機関からの懸念、農業委員会版との調整、DeFiの扱いも未解決だったと、上院関係者がCoinDeskに述べています(8/6報道)。
  • 共和党の反対4人のうち、Tillis議員は再考動議のための反対票でした。ほかの3人は法案の内容そのものに反対したと報じられています。

④ここまでの経過

日付出来事
2025/5/29下院に法案を提出
2025/7/17下院が294対134で可決
2025/7/18GENIUS法(ステーブルコイン規制)が成立
2025/9/18上院に送付され、銀行委員会に付託
2026/5/14上院銀行委員会が15対9で可決(共和党13人全員と民主党2人が賛成)
2026/7/22共和党が倫理条項を含む更新版を公表(2029年に失効する規定を含む)
2026/8/6〜88月休会前の採決は見送り。ツーン院内総務が9/15の採決に向けた手続きを申請
2026/9/13〜14共和党が最終版を公表(倫理条項の失効規定を削除)
2026/9/15審議入りの採決で否決(49対50)
2026/9/17SECが「イノベーション免除」を発表

⑤市場への影響

  • 当日の動き:採決直後、ビットコインは約3%下落し、約74,900ドルまで下げましたが、9/18〜19に80,000ドル台を回復しました(→ 詳細はビットコイン連載その後)。Coinbase株・Circle株は、市場全体の売りの中でともに下落しました。下落幅は報道により幅があり、CNBCはCoinbase約8%・Circle約10%、The InformationはCoinbase約10%・Circle約11%、Axiosは「Coinbaseは8%超」と報じています。
  • 成立確率:予測市場Polymarketの「2026年内に成立」は、前日の約3割台から採決当日の朝に約17〜18%、9/18には約8%まで下がったと報じられています(Barron’sは当日約19%、前日約31%と報じています)。
  • Bitwise(Hougan氏):9/16のメモで、今回の否決を「一時的な障害であって、行き止まりではない」と位置づけました。ビットコインが7/1の約57,950ドルから9/4に8万ドル超へ上昇する間に、Polymarketの成立確率は39%から18%に低下しており、法案の成否と価格が逆行していたためです。Bitwise自身も、因果関係や将来の値動きを示すものではないとしています。
  • Coinbase(Armstrong氏):もう議会を待てない、SECとCFTCには既存の権限で明確なルールを作る手段がある、と投稿しました。
  • Galaxy Research(Thorn氏):当面は事実上終わったとの評価を示しています。

⑥今後の道筋

道筋内容見通し
再採決Tillis議員の再考動議で手続き上の道は残るが、日程は未設定。中間選挙後のレームダック会期を探る声もある。前例として、GENIUS法は2025年5月の最初の採決で48対49で否決されたが、11日後の2回目で66対32で可決された(報道)長期戦。上院は10/2から休会に入り選挙後に再開、下院は選挙運動期間で休会中と報じられている。民主党が上下院のどちらかを奪えば、さらに難しくなる(NPR)
規制当局が先行SECは9/17(木)、トークン化株の取引場に5年間の暫定免除(イノベーション免除)を発表。8月には「Regulation Crypto Assets」を提案し、意見募集は10/20まで。CFTCも規則を出す準備ができていると発表進行中。ただし免除や規則は将来の委員会で変更でき、立法ほど恒久性がない
次の議会今議会で成立しなければ、来年以降の議会で再挑戦未定

なお、SECとCFTCは2026年1月に「Project Crypto」を共同の取り組みにし、3月には暗号資産を5分類する共同解釈を出しています(SEC提出書類の記述)。法案がなくても、規制当局による整備は進んでいます。

⑦日本との対比

日本では7/15に金商法改正が成立し、暗号資産が金融商品として規制されます。米国が市場構造の線引き(SECとCFTCの分担)で難航しているのに対し、日本は業法、インサイダー規制、税制を中心に法律が成立しました。対象が異なるため単純な比較はできませんが、法整備の進み方は日米で分かれています。→ 詳細:日本の暗号資産規制はどこまで進んだか

⚠️ ここでは今後のビットコイン価格の見通しは示しません。法案が通らなくても、暗号資産の取引や規制当局の運用が止まるわけではなく、影響の見方は分かれています。
📌 まとめ

クラリティ法案は9/15、米上院の手続き採決で賛成49・反対50となり否決されました。争点は、公職者の暗号資産事業をめぐる倫理条項とステーブルコインの利息でした。倫理条項は、7月版にあった2029年の失効規定が最終版で削除されましたが、民主党の賛成は得られませんでした。再採決の動議は出ているものの中間選挙前は厳しく、当面はSECとCFTCが既存の権限で整備を進めます。
📚 主な出典
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年
ファンダメンタルを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。たまにチャート分析もします。ナンピンは得意です。
X(旧Twitter):@pablo29god
⚠️ 免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品(暗号資産を含む)の売買を推奨・勧誘するものではありません。また、特定の政党・議員・人物への支持や批判を示すものでもありません。市場価格は常に変動しており、掲載情報の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。法案の内容や審議状況は変わる場合があります。執筆者は金融商品取引業者ではなく、投資助言業の登録を受けていません。投資判断はご自身の責任で行ってください。暗号資産・FX・先物・CFD取引は、価格変動やレバレッジにより元本を超える損失が生じる可能性があります。

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