【2026年10月FOMC】利上げ一時停止、反対2票は「利上げすべき」——ウォーシュ議長「金融の薬は効き始めている」、12月利上げ確率は85%へ

FOMC
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前回9月会合の内容は、声明・SEP編と会見編をご覧ください。今回は声明と会見を1本にまとめています。

⏳ 30秒で読む結論

10月27〜28日のFOMCは政策金利を3.75〜4.00%に据え置いた。採決は10対2で、クック理事とハマック総裁が0.25%の利上げを主張して反対。理事と地区連銀総裁が同じ方向で反対したのは1992年10月以来となる。ウォーシュ議長は「金融の薬は効き始めている」として様子見を選びつつ、2%超のインフレは容認しないと強調し、12月の利上げ観測を打ち消さなかった。


①据え置き。ただし反対2票はいずれも「利上げすべき」というタカ派の票
②景気判断は「堅調(solid)」から「力強い(strong)」へ引き上げ
③2027年秋から年1回、金利を決めない「戦略会合」を導入

決定内容——据え置き、10対2の分裂採決

FOMCはFF金利の誘導目標を3.75〜4.00%に据え置いた。9月に2023年以来となる利上げを実施した後の、最初の会合での一時停止となる。

FF金利誘導目標3.75〜4.00%(据え置き)
採決10対2
反対票クック理事、ハマック総裁(クリーブランド連銀)
いずれも据え置きに反対し、0.25pt利上げを主張
前回9月12対0の全会一致で0.25pt利上げ

ハマック総裁の反対は市場の想定どおりだった一方、クック理事の反対は意外感をもって受け止められた。会合前の予想では、反対票の候補はハマック、ローガン(ダラス連銀)、カシュカリ(ミネアポリス連銀)の3総裁とみられていた。Fortune誌によれば、クック理事にとっては2022年の就任以来初めての反対票で、理事と地区連銀総裁がそろって同じ方向に反対したのは1992年10月以来となる。

クック理事をめぐる解任問題

トランプ大統領はクック理事の解任を目指している。2025年8月の最初の解任は最高裁に阻まれたが、10月7日付の大統領覚書で、2021年の住宅ローン申請をめぐる「虚偽記載」疑惑を調べる調査委員会を新たに設置した。委員は国家経済会議(NEC)のハセット委員長ら3人で、ホワイトハウスでの非公開の聴聞会は中間選挙2日後の11月5日に予定されている。

これに対しクック理事の弁護人は13日付の書簡で、11月5日は欧州での公務と重なるため出席できず、聴聞会を開くとしても12月8〜9日のFOMC以降になると通知し、委員会の公正性にも疑問を呈した。クック理事本人は不正を否定している。ホワイトハウスが日程を変更したとの報道は28日時点で確認できず、Semaforは同日時点でも「来週の聴聞会」と報じている。

会見でウォーシュ議長は、自身の知る限り、議長もFRBもその手続きには関与しないとの認識を示した。

声明文(全文訳)

「委員会は、FRBのデュアルマンデートを支えるため、FF金利の誘導目標を3.75〜4.00%に据え置くことを決定した。委員会は、銀行システムにおいて潤沢な準備を維持する政策を継続している。

経済活動は力強いペースで拡大している。地政学的な展開を一因として不確実性は依然高いものの、国内支出は底堅く推移している。生産性の伸びは強く、設備投資は堅調である。雇用の増加は労働力の伸びに見合うペースを保っており、失業率はほとんど変化していない。

インフレは依然として高止まりしている。より多くの情報が蓄積されることで、委員会は、インフレを2%目標へ適時に回帰させるために適切な政策スタンスを判断しやすくなる。委員会は物価安定を実現する。」

反対票:クック理事、ハマック総裁(0.25pt利上げを選好)

出典:Federal Reserve「Federal Reserve issues FOMC statement」(2026年10月28日、原文は出典欄のリンク先を参照)

9月声明からの変更点

項目 9月 10月
景気判断堅調なペース(solid)力強いペース(strong)
政策措置の説明本日の措置は2%目標へのより早期の回帰を後押しするより多くの情報の蓄積が、適切な政策スタンスの判断に役立つ
締めの一文委員会は物価安定を実現する変更なし

景気判断を引き上げながら金利は据え置く——という組み合わせが今回の声明の特徴だ。「情報の蓄積」という表現は、次の一手を12月までのデータに委ねる書きぶりといえる。

実施ノート——各種金利は据え置き

準備預金への付利(IORB)3.90%(10/29付)
常設レポ(SRF)4.0%
常設リバースレポ(ON RRP)3.75%
1社あたり上限1,600億ドル/日
プライマリー・クレジット・レート4.0%(据え置き)

準備を潤沢な水準に保つため、適切な場合には短期国債(必要に応じて償還まで3年以内の国債を含む)を買い入れる方針も示された。米国債の償還元本はロールオーバーし、エージェンシー証券の償還元本は短期国債に再投資する。

会見冒頭——景気は「正しい方向」、インフレは「高すぎる」

景気と雇用

ウォーシュ議長は冒頭、景気について次のように説明した。

  • 上期のGDP成長率は1.8%から2.4%へ上方修正
  • 7〜9月期は個人消費が3%超、設備投資が2桁ペースの伸びとみられる
  • 設備投資のGDP比は歴史的な高水準。ハイテク投資が主導しつつ、他の分野にも広がっている
  • 失業保険申請件数の4週移動平均は「数世代ぶり」の低水準で、雇用面は「かなり良好」

一方でインフレは6年近く目標を上回っており、今回の議論は主に物価安定の側に集中したという。エネルギー価格が再び上昇していることにも触れ、一部の価格上昇が経済全体に波及しないようにすること、インフレ期待をつなぎ留めることが自らの責務だと述べた。

金融環境は「引き締まったが、引き締め的とまではいえない」

9月の利上げ以降、一部の企業や家計にとって金融・信用環境は引き締まり、市場参加者も資金の配分先をより慎重に選ぶようになったという。ただし議長は、全体として「引き締まった」とはいえても「引き締め的」と断じることはできない、と慎重な言い回しを使った。

来秋からFOMCの運営を変更

年 会合の構成(年8回)
2026年8回すべて政策決定会合(現行)
2027年戦略専用1回(金利の採決・声明なし)+政策決定7回
2028年戦略専用2回+政策決定6回(予定)

年8回という開催回数は1981年から続く慣行だ。議長は、目先の経済動向を定期的に点検するのと同じくらい、長期的な大きな問いを考える時間が重要だと説明し、「会合日程は単なる事務の話ではなく、組織としての選択だ」と位置づけた。

🔍 ぱぶちゃん視点
金利を決める機会が年1〜2回減ることで、残りの会合と、会合の間に出る経済指標の重みが増す。フォワードガイダンスに否定的な議長の姿勢とあわせ、市場にとっては「読みにくいFRB」へ一歩進む変更だ。

質疑応答——報道から拾った主な論点

なぜ利上げしなかったのか

議長はインフレの抑制を段階的なプロセスと位置づけた。9月の利上げを経てインフレ期待が下がり始めているとし、「金融の薬はある程度効き始めているが、確たる結論はない」というのが委員会の大勢の見方だと説明。今回は立ち止まって現状を見極める局面だとした。

2%超のインフレは容認しない

FRBが2%を上回るインフレを事実上容認しているのでは、との見方について、議長はそうした誤解があるなら正したいとの趣旨で強く否定した。

12月の利上げは?——フォワードガイダンスはしない

年内の追加利上げへの支持を問われると、議長は回答を避けた。危機時を除いてフォワードガイダンスは支持しないとの持論を繰り返し、6週間後の会合で何が起きるかについて自分の考えは語れないとした。

中間選挙(11/3)の影響は?

トランプ政権は中間選挙前の利上げをけん制していたが、議長は据え置きに政治は一切関係ないと強調した。政治は自分にとってだけでなく、委員会の誰の判断にも影響していないとし、「2日間同僚と議論したが、政治に関する発言は一言も聞かなかった」と述べた。今後は情報が豊富に出てくる時期だから、というのが据え置きの理由だという。

トランプ大統領の発言について

FOMCの多くがオバマ・バイデン両政権の任命者だとするトランプ大統領の批判について問われたが、議長は「公職者の発言には答えない」と応じなかった。

消費者の物価不安

据え置きで消費者の信頼が揺らぐのでは、との質問には、ガソリン価格が急上昇するなかで消費者が物価を心配するのは当然としつつ、それは短期的な懸念であり、インフレがいずれ下がるという信頼そのものが失われたわけではないとの認識を示した。

金利はAI投資ブームを冷やすか

高い金利はAI関連の投資にも影響していると述べ、AI投資だけが経済の他の部分から切り離されているわけではないとの考えを示した。テック企業の資金調達に対して投資家の姿勢が厳しくなっている点にも触れたと報じられている。

景気を冷やして失業を増やすつもりはない

景気の勢いが増していることが、そのままインフレ圧力の高まりを意味するわけではないとの考えも示した。生産性の向上によって、インフレをあおらずに成長が続く余地があるとの楽観的な見方を述べ、利上げで人々を失業させることは望んでいないとした。

タスクフォースの進捗

6月に立ち上げた5つのタスクフォースについて、議長は定期的に進捗を確認しているが、最終報告と呼べるものはまだないと説明した。年内の提出期限には「全部ではないが一部」が間に合う見込みで、それも政策見直しの議論の出発点にすぎないとした。バランスシートを扱うタスクフォースの提言は、2027年1〜3月期の早い時期にFOMCへ上がる見通し。11月16日には生産性・雇用タスクフォースが公聴会を開き、議長も出席する予定だ。

FedWatch——12月利上げの織り込み

時点 12月利上げ確率
会合前
10/28 08:57:18 CT(日本時間22:57)現在
78.4%
会合後
10/28 NY引け後のCNN報道
85%

※CMEのFedWatchツールの数値。会合後の数値は報道ベースで、最新の確率はリンク先で確認できます。

声明と会見を受けて、12月利上げの織り込みはむしろ進んだ。議長が12月の利上げ観測を打ち消さなかったことと、利上げを主張する反対票が2票出たことが、そのまま確率に反映された形だ。

次回会合と注目点

次回は12月8〜9日で、SEP(経済見通し)とドットプロットが公表される。9月のドットプロット中央値は年内あと1回の利上げを示しており、今回の会見もその見方を否定しなかった。

それまでに11月3日の中間選挙、10月分の雇用統計とCPIが控える。9月のCPIは前年比3.7%(予想3.6%)で、ガソリン価格の上昇が押し上げた(詳しくは9月CPIの解説記事)。エネルギー価格が12月の判断を左右する構図は変わらない。クック理事という「意外なタカ派票」が加わったことで、12月利上げを支持する範囲は委員会の強硬派の外にまで広がったとの見方も出ている。

投資家目線でどう読むか——ぱぶちゃんの考え

今回もフォワードガイダンスはなかった。ただ、「雇用は安定しているので物価に注視していく」という軸は、8月のジャクソンホール会議の基調講演以来ぶれていないと考える。議長は雇用を「かなり良好」と評価する一方、今回の議論は物価の側に集中したと明言した。デュアルマンデートを意識して雇用にも触れてはいるが、投資家としては、2%の物価安定に向けて物価のデータを最重要視していけばよい、と受け取った。

議長は「景気を冷やして失業させるつもりはない」とも語っており、景気を冷やさない程度に利上げを進めていく姿勢がうかがえる。ただし、この言葉は生産性の向上で成長とインフレ抑制を両立できる、という見立てが前提だ。声明の「物価安定を実現する」は無条件の約束なので、インフレが続けば優先されるのは物価のほうになる。

カギを握るのは中東情勢

そのインフレの行方を左右しているのが、膠着した中東情勢だ。WSJによれば、米国は湾岸諸国に、中間選挙後の短期集中型の軍事作戦に備えるよう伝えたという。28日の原油はWTIが102.78ドル、ブレントが115.32ドルで引けた。

物価への経路は2つある。1つはペルシャ湾のホルムズ海峡を通る原油・エネルギー。もう1つは紅海からスエズ運河を抜ける航路で、こちらは原油に限らず、ドライバルクやコンテナといったモノの物流全体が通る。どちらも通航量は戻りつつある。ホルムズ海峡では原油輸送量が戦争前の水準に近づき、スエズ運河でも10月前半のコンテナ通航が2023年の半分を初めて超え、極東—欧州航路の船腹の約6割が紅海経由に戻った。

ただし、問題は量ではなく値段だ。ホルムズ海峡では10月に入ってタンカーへの攻撃が再び激化し、タンカー運賃は過去最高を記録した。WTIも開戦直前(2月27日)の67.02ドルから5割以上高い水準にある。量が戻っても値段が戻らなければ、2%目標を上回る物価高は続く。

議長は、エネルギーなど一部の価格上昇が経済全体に広がらないようにすることが責務だと述べた。9月のCPIは総合3.7%に対しコア2.6%で、今のところはガソリン主導だ。しかし、中東情勢がだらだらと続けば原油起因の物価上昇も続き、物流費や原材料費を通じて、いずれコア指数にも影響が出てくるだろう。紅海の回復も、フーシ派とサウジアラビアの衝突が広がるなかで、イラン側の出方ひとつで逆戻りしかねない脆さを抱えている。

逆に、ペルシャ湾と紅海の両方で以前のように安心して船が航行できるようになり、原油価格や運賃が戦争前の水準へ戻っていけば、エネルギーとモノの両面から物価指数は落ち着くと思われる。INGは、選挙後に攻撃がなければ、それだけで原油のリスクプレミアムが剥がれ始める可能性があると指摘している。

問題は、それがいつになるのかだ。その頃にFF金利が上がりすぎていれば、急激な利下げも難しくなる。利上げの効果は時間差で表れるため、原油が落ち着いてインフレが下がり始めたタイミングで、利上げのブレーキが遅れて効いてくる恐れがある。6年近く目標を上回るインフレを抱えるFRBにとって、早すぎる利下げは信認を損ねかねないうえ、来年からは金利を決める会合も減る。だからこそ、FRBは利上げのペースを慎重に選んでいるのだろう。

投資家として見ておきたいもの

  • ① コアCPI・サービス価格・期待インフレ(物価の「広がり」)
  • ② 原油価格とタンカー・コンテナ運賃(通航量より値段)、ホルムズ海峡・紅海(スエズ運河)の情勢
  • ③ 米長期金利・社債スプレッド(議長が強調した金融環境の引き締まり)

来年から金利を決める会合が減り、ガイダンスもない以上、会合の間に出る指標で答え合わせをする姿勢が、これまで以上に大事になる。

📚 主な出典

✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年
ファンダメンタルを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。たまにチャート分析もします。ナンピンは得意です。
X(旧Twitter):@pablo29god

【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。市場価格は常に変動しており、掲載情報の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません(執筆時点:2026年10月29日)。執筆者は金融商品取引業者ではなく、投資助言業の登録も受けておりません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任においてお願いいたします。FX・先物・CFD取引はレバレッジにより元本を超える損失が生じる可能性があります。

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