この記事は、横浜市長選挙2026のシリーズ第3弾です。第1弾(告示前)では選挙のいきさつと日程、立候補予定者の紹介、第2弾(告示後)では選挙公報にもとづく7人の公約を整理しました。今回は、その続きとして、迷っている人向けのガイドをまとめます。
SNSでは、横浜市長選について「どの候補に入れるか迷っている」という声が多く見られます。この記事は、特定の候補を勧めるものではありません。報道でよく使われている見方、IR(統合型リゾート)の基本、公報に書かれていない7人の考えを、出典つきで整理します。
1. IR(統合型リゾート)とは
IRは、カジノを含む大型の複合観光施設です。英語のIntegrated Resortの略です。法律(IR推進法第2条)は、カジノ施設と、会議場・レクリエーション・展示・宿泊などの施設が「一体となっている施設」で、民間事業者が設置・運営するもの、と定めています[S26]。

| 構成する施設 | 内容・基準 |
|---|---|
| 国際会議場・展示場(MICE) | 最大の会議室は、収容人員がおおむね千人以上など(施行令第1条)[S27] |
| 宿泊施設 | 全客室の床面積の合計が10万㎡以上[S19] |
| 魅力増進施設 | 劇場・博物館などのレクリエーション施設、レストラン、ショッピングモール[S18] |
| 送客施設 | 日本国内の旅行を提案・手配する施設[S18] |
| カジノ施設 | 1つの区域に1つまで[S17]。カジノの部分(ゲーミング区域)の床面積は、IR施設全体の床面積の合計の3%まで(IR整備法第41条第1項第7号等)[S20] |
知っておきたい3点
- カジノは、IRの一部です。床面積は、全体の3%以内に制限されています。
- ただし、小さいから影響が小さい、とは限りません。制度は、収益性の高いカジノと組み合わせることで、他の施設の運営を支える設計です[S21]。法律の目的にも、観光・地域経済の振興とともに「財政の改善に資する」ことが書かれています[S26]。
- 賛否が分かれます。2019年に市が公表した試算では、開業後の経済効果は年間約7,700億〜1兆6,500億円でした。一方、ギャンブル依存症や治安悪化への懸念も強く出ていました[S23]。
治安・ギャンブル依存症の論点:日本人の入場料と回数制限
カジノの賛否では、治安やギャンブル依存症への懸念がよく挙げられます。この点で、制度上の特徴の一つが、日本人の入場への制限です。
- 入場料:日本人がカジノに入場する際は、入場料等として1回6,000円です[S20]。
- 回数制限:入場の回数は、7日間で3回、28日間で10回までです[S20]。
参考として、すでに日本国内にある身近なギャンブルの入場料を並べます。
| 施設 | 入場料 |
|---|---|
| カジノ(IR整備法) | 日本人:1回6,000円。入場は7日間で3回、28日間で10回まで[S20] |
| JRA(中央競馬) | 通常開催日は100〜200円(15歳未満無料)。混雑が見込まれる大レースは1,000円(2025年の日本ダービー・有馬記念当日)[S28、S29、S30] |
| 地方競馬(例:大井競馬場) | 100円(15歳未満無料)[S34] |
| 競輪(例:川崎競輪場) | 無料[S31] |
| ボートレース(例:平和島) | 本場開催日は100円(開催によっては入場無料)。場外発売のみの場合は無料[S32] |
| オートレース(例:川口オートレース場) | 無料[S33] |
| パチンコ・パチスロ | 入店だけなら無料(一般的な運用) |
公営競技の入場料は、競技や開催場ごとに異なります。表は各競技の例です。指定席などは、別料金の場合があります。JRAは、GⅠ当日など混雑日の入場料が変わる場合があるとしています[S28]。
入場料だけを見ると、カジノの6,000円と、公営競技(無料〜1,000円)や入店無料のパチンコ・パチスロとでは、設定が大きく違います。「依存症や治安が心配だから、カジノだけを問題にする」のであれば、すでにある施設との違いも、あわせて見たいと私は考えています。
ただし、入場料や回数制限があれば依存症が減る、と言い切れるわけではありません。どこまで効果があるのかは、評価が分かれるところです。賛否のどちらの立場でも、「すでにある施設の対策も含めて、どう減らすのか」まで語られているかを見たいと思います。
横浜の経緯
- 2019年8月22日:林文子市長(当時)が、山下ふ頭へのIR誘致を正式に表明[S22]
- 2021年8月:市長選で、撤回を掲げた山中氏が当選。9月10日の所信表明で「誘致の撤回を宣言」し、IR推進室は10月1日付で廃止[S24]
- 2026年:7人全員が、IR誘致に反対(アンケート)[S14]
IRで差がつかなくても、山下ふ頭の使い方は、候補で違います(4章の表)。
2. 報道でよく使われている「見方」
見出しや冒頭の表現を、並べました。各社の意図は、筆者にはわかりません。
| 見方 | 使われている表現 | 見えること | 見えにくくなること |
|---|---|---|---|
| 山中市政の継続か | 「市政継続の是非を問う『出直し選』」[S1]、「市政継続の是非などが争点」[S2]、「山中氏が市政運営を継続する是非が主な争点」[S3、S5]、「市政の継続か刷新か」[S4] | 選挙のきっかけと、最大の争点 | 他の6人の政策の違い |
| 本命は誰か | 「本命視」[S6]、「パワハラ前職vs無名弁護士が軸」[S7] | 推薦する組織の厚さ | 推薦の有無と、政策の中身は別、という点 |
| 信頼回復 | 「市政への信頼回復、トップ誰が」[S13] | 市役所組織の立て直し | 暮らしに関わる政策の違い |
| 5年前の対立の再現 | 「菅元総理が因縁の相手『ハマのドン』と真っ向勝負」[S12]、「『カジノ推進の菅元首相 対 ハマのドン』第二幕か」[S25] | IRをめぐる過去の対立と人間関係 | 今回は7人全員が誘致に否定的で、IRが争点になりにくいこと[S14] |
| 混戦 | 「異例の混戦が幕を開けた」[S1] | 7人が出たこと | 各候補が何をしたいか |
| 盛り上がり | 「盛り上がらない」[S7]、「投票率向上へ選管苦心」[S8] | 関心の低さへの懸念 | ネット討論会が2回開かれ、リハックの動画は約15万4千回再生されたこと(10日夜時点)[S9] |
| 財源 | 「パワハラ問題や財源巡り質疑集中」[S10] | 給食・子育て支援の無償化に、財源の質問が出たこと | 金額で示した候補がいないこと |
山中氏の選挙戦は、報道で表現が分かれています。東京スポーツは街頭演説の告知をしていないと伝え[S6]、東京新聞は主要駅や商店街で謝罪から話し始めたと伝えています[S11]。
3. 公報にない7人の考え
公報に書かれていた内容は、第2弾を参照してください。立候補前の表明や経歴は、第1弾にあります。
特記がなければ、タウンニュース政治の村のアンケート(全14問、7人全員が回答)による[S14]。公報に書かれていた内容は除いています。
山中竹春氏
- 特別市:賛成。早期の法制化を目指す
- 財政:データを活用した行財政改革。減債基金に過度に頼らない
- 山下ふ頭:「市民のための再開発」が前提。緑豊かな水際線を確保し、ゾーニングで民間事業も展開
- ハラスメント対策:職員による市長評価(360度評価)と結果公表、人事の異議申立、特別職の行動基準、第三者の通報窓口
- 出馬会見:「私はハラスメント加害者。なぜこの問題が起きたか理解しているから行える対策がある」[S16]
藤川さちこ氏
- 特別市:反対。区ごとの独自予算と、将来的な区長公選制・区議会の設置を挙げる
- 財政:大型開発の予算見直しから始める
- 物価高:水道料金の基本料金の減免。公契約条例の制定[S15]
- 園芸博:汚染土は持ち込ませない
原沢あつみ氏
- 特別市:賛成
- 財政:事業の優先順位付けと行政改革。成長産業の誘致で税収基盤を強化。減債基金などの臨時財源に頼り続けない
- 園芸博:追加予算に頼らず、既に計上された予算で着実に実行
- 山下ふ頭:公共空間と民間活力の両立。IRの再誘致はしない
- 中学校給食:自校調理方式も含めて検討
福山あつし氏
- 特別市:賛成・反対の二者択一ではない。予算や税財源の確保が目的なら反対
- 財政:外郭団体や既存事業のゼロベース検証。歳入は企業誘致、起業支援、市有資産の活用、ふるさと納税の収支改善
- 園芸博:市の負担額や費用を継続して公開し、追加の市民負担を抑える
- 山下ふ頭:埠頭機能を維持しながら、クルーズ船誘致などで活用
あさか由香氏
- 特別市:反対。まず18区の区役所に権限と財源を移す
- 財政:大規模開発や民間事業への公費投入を精査し、生活分野に回す。国の補助制度を活用
- 園芸博:過大な来場者目標や事業費の膨張を抑える
- 山下ふ頭:公共空間を中心に、民設民営ありきにしない
山本理顕氏
- 特別市:賛成
- 財政:天下り禁止条例の徹底。世界から移住者を募る
- 園芸博:開催には反対しない。跡地は水田に
- 山下ふ頭:「世界町家」。瑞穂埠頭の「タウンシップ・タウン」と連携
- 中学校給食:デリバリー方式は評価しない。食堂を整備
中谷一馬氏
- 特別市:更なる議論が必要
- 財政:既存事業を成果で検証。2030年度予算案編成での減債基金の臨時的活用からの脱却目標を継承
- 物価高:地域で消費が回る商品券[S15]
- 園芸博:市の負担や追加支出は、理由と金額を公開
- 山下ふ頭:カジノは誘致せず、市民や港湾関係者と対話しながら再開発
4. テーマ別に並べてみる
アンケート[S14]の回答を、テーマごとに並べました。
| 候補 | 特別市 | 財政の方向 | 山下ふ頭 | 園芸博 | 中学校給食の方式 | ハラスメントの具体策 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 山中竹春 | 賛成 | データを活用した行財政改革 | 市民のための再開発が前提 | ― | ― | 360度評価と結果公表、第三者の通報窓口 |
| 藤川さちこ | 反対 | 大型開発の予算見直し | ― | 汚染土は持ち込ませない | ― | ― |
| 原沢あつみ | 賛成 | 優先順位付け、成長産業の誘致 | 公共空間と民間活力の両立 | 既計上の予算で実行 | 自校調理も含めて検討 | ― |
| 福山あつし | 二者択一ではない | ゼロベース検証、歳入の増加策 | 埠頭機能を維持、クルーズ船誘致 | 費用を継続して公開 | ― | ― |
| あさか由香 | 反対 | 大規模開発への公費投入を精査 | 公共空間を中心に | 事業費の膨張を抑える | ― | ― |
| 山本理顕 | 賛成 | 天下り禁止、移住者の募集 | 世界町家 | 開催に反対しない、跡地は水田に | 食堂を整備 | ― |
| 中谷一馬 | 更なる議論が必要 | 既存事業を成果で検証 | カジノは誘致せず、対話しながら再開発 | 負担や追加支出を公開 | ― | ― |
「―」は、前の章に記載がないものです。賛成・反対の意思表示ではありません。回答の詳細は、S14(タウンニュース政治の村のアンケート)を参照してください。
5. 迷ったときの見方
- 自分が重視するテーマ(子育て、財政、市役所改革、まちづくりなど)を1つ決める
- そのテーマで、公報とアンケートの両方に書いている候補を探す
- 財源・規模・期間・対象の4つが書かれているかを見る
- 推薦する組織の有無と、政策の中身は別として見る
6. 投票前に
期日前投票は10月17日まで、投票日は10月18日の7時〜20時です。日程や投票できる人の条件は第1弾、公報の内容は第2弾にまとめています。
- 第1弾:横浜市長選2026|いきさつ・日程・立候補予定者
- 第2弾:横浜市長選2026|選挙公報で見る7人の公約
- 第3弾:この記事(迷っている人のためのガイド)
- IRは、カジノを含む複合施設で、カジノの床面積は全体の3%以内
- 日本人のカジノ入場料は1回6,000円で、回数制限もある。公営競技は無料〜1,000円、パチンコ・パチスロは入店無料
- 報道の見方は、山中市政の継続、本命、信頼回復など、切り口ごとに見えるものが違う
- 公報にない考えは、アンケートで確認できる
- 迷ったら、重視するテーマを1つ決め、財源・規模・期間・対象を見る
📚 主な出典
- S1 神奈川新聞『横浜市長選が告示、7人立候補 パワハラで辞職 山中氏の市政継続是非問う「出直し選」』(2026年10月4日)|記事リンク
- S2 東京新聞『横浜市長選挙、パワハラ辞任の前市長含む7人が立候補 市政継続の是非などが争点 18日投開票』(10月4日)|記事リンク
- S3 共同通信『横浜市長選に7人が立候補 山中氏出直し、18日投開票』(10月4日)|記事リンク
- S4 NHK『横浜市長選挙 パワハラ問題で辞職の前市長と新人 7人が立候補』(10月4日)|記事リンク
- S5 日本経済新聞『横浜市長選挙が告示、7氏の争い パワハラ辞職山中氏も出馬』(10月4日)|記事リンク
- S6 東京スポーツ『【横浜市長選】元ミス横浜、元ヤンキー、元甲子園球児ら7人立候補の熱戦』|記事リンク
- S7 日刊ゲンダイ『盛り上がらない横浜市長選は「パワハラ前職vs無名弁護士」が軸…』(Infoseek配信)|記事リンク
- S8 神奈川新聞『投票率向上へ選管苦心 パワハラきっかけの選挙、「盛り上げ」るのも…』|記事リンク
- S9 タウンニュース『横浜市長選「リハック」討論会で7人が論戦』(10月11日)|記事リンク
- S10 産経新聞『横浜市長選の候補者7人が「ネット討論会」で舌戦 パワハラ問題や財源巡り質疑集中』(10月9日)|記事リンク
- S11 東京新聞『「パワハラ辞職」前市長の謝罪出直しにライバル候補は…市民の見方は真っ二つ 横浜市長選挙告示』(10月5日)|記事リンク
- S12 現代ビジネス『横浜市長選、菅元総理が因縁の相手「ハマのドン」と真っ向勝負…』|記事リンク
- S13 共同通信『市政への信頼回復、トップ誰が 大都市横浜の前進へ舌戦始まる』(10月4日)|記事リンク
- S14 タウンニュース政治の村『横浜市長選 2026 立候補者アンケート』|記事リンク
- S15 神奈川新聞『横浜市長選挙の候補者アンケート 市長に就任して最優先で取り組む政策は』(10月9日)|記事リンク
- S16 毎日新聞『前横浜市長・山中氏が出馬会見 「加害者として行える対策ある」』(9月29日)|記事リンク
- S17 特定複合観光施設区域整備推進本部『特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針』(令和2年12月18日)|資料(PDF)
- S18 参議院調査室『立法と調査』No.395『カジノを含む統合型リゾートの実現に向けた取組』(2017年12月)|資料(PDF)
- S19 日経クロステック『超巨大ホテルと会議場併設が条件、IR整備法施行令で基準』(2019年)|記事リンク
- S20 カジノ管理委員会事務局『IR整備法におけるカジノ行為に対する依存防止対策の概要』(令和8年7月17日、ギャンブル等依存症対策推進本部 幹事会 資料2)|資料(PDF)
- S21 EY『統合型リゾート(IR)整備法案の規制のポイント』(2018年)|記事リンク
- S22 日本経済新聞『横浜市長、IR誘致を正式表明 山下ふ頭へ立地想定』(2019年8月22日)|記事リンク
- S23 日本経済新聞『横浜市がIR誘致へ 山下ふ頭を候補地に』(2019年8月19日)|記事リンク
- S24 日本経済新聞『横浜市長が所信表明 IR「誘致撤回を宣言」』(2021年9月10日)|記事リンク
- S25 データ・マックス『パワハラ山中市長辞職の横浜市長選『カジノ推進の菅元首相 対 ハマのドン』第二幕か』|記事リンク
- S26 『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律』(平成28年法律第115号)第1条・第2条|日本法令外国語訳データベース
- S27 『特定複合観光施設区域整備法施行令』第1条|日本法令外国語訳データベース
- S28 JRA『競馬場の入場料』|JRA公式
- S29 JRA『東京優駿(日本ダービー)当日の入場券について』(2025年5月)|JRA公式
- S30 JRA『有馬記念当日の入場券について』(2025年12月)|JRA公式
- S31 川崎競輪場『場内ガイド(入場料)』|川崎競輪場公式
- S32 ボートレース平和島『ビギナーガイド&FAQ』|ボートレース平和島公式
- S33 川口オートレース場『レース場ガイド』|川口オートレース公式
- S34 東京シティ競馬『東京大賞典当日(12/29)における大井競馬場への入場及び指定席発売について』|TCK公式
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年
ファンダメンタルを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。たまにチャート分析もします。ナンピンは得意です。
X(旧Twitter):@pablo29god
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の候補者・政党への投票を推奨・呼びかけるものではありません。記載内容は2026年10月11日時点の報道・公式資料等にもとづくもので、正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。報道の表現は各社の原文のまま引用しており、各社の意図は筆者にはわかりません。各候補の正式な公約は、横浜市選挙管理委員会が公開する選挙公報等でご確認ください。



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